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2024年5月9日(木)

きょうの潮流

 ふたりは、海とともに生きてきました。漁師の家に育ち若い頃に知り合って恋愛結婚。八代海からの恵みをうけ、長く「夫婦船」で生計をたててきました▼ところが、当たり前のように食べてきた魚によって、体がむしばまれていきます。けいれんや手足のしびれ。水俣病の症状でした。「妻は去年の4月、『痛いよ痛いよ』といいながら死んでいきました」と、夫の松崎重光さん▼水俣病と認められないまま亡くなった松崎悦子さん。妻の無念さを重光さんが伝えようとしていたときでした。突然マイクの音が切られ発言はさえぎられました。環境省が水俣病被害者の声を聞く懇談の場で▼「スイッチを切るなんておかしいじゃないですか。人間の常識では考えられんですね。母ちゃんが泣いて苦しんで苦しんで逝ったから…ほんとうに聞こうと思えば時間の問題なんか関係ない」と重光さん。出席した各団体の発言時間は、わずか3分。形ばかりで聞くつもりはないといわんばかりの対応です▼その場にいた伊藤信太郎環境相はきのう謝罪に出向きました。しかし、事務局の不手際というなら、なぜそのときに謝りたださなかったのか。水俣病にたいし、まともな調査もせず、救済も線引きし、全面解決に背を向けてきた自民党政治の姿勢がここでもあらわに▼水俣病が公式に確認されてから68年。国や加害企業のチッソから見捨てられてきた多くの人たちが今も認定を求めて闘っています。長年苦しんできた被害者の声をいつまで切り捨てるのか。


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